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18:26 15/01/07

本: 2014年マイベスト12

去年読んで面白かった本の紹介タイムです。 マンガも技術書も小説もごたまぜです。 あと例によって自分が読んだ基準なので、 もっと昔に出版された本も混ざっています。むしろそちらの方が多いですね。 ベスト12なのは何故かというと10に絞りきれなかったからです。

  1. レストー夫人
    ベスト10に絞るのは悩んだけれどベスト1ならすぐに決まりました。 クラスの出し物の劇を練習する生徒達を描いた連作短編集…と設定を書いても特色はまったく伝わらないですね…。 なんだろう、自分は割となんでもホイホイ感動しちゃうタイプだと思うんですけど、 中でも弱点として、明確に登場人物一人のセリフなのに、 そこまでの物語の積み重ねを考えると幾人もの言葉として読めてしまう、 みたいなシーンが好きすぎて。 この短編集もどのお話も良いのだけど、 特に「度を過ぎて無口すぎる子の演じる役に腹話術得意な子が声だけ当てることになっちゃった」回、 もうこれは私の琴線を全力で殴ってくるのです。
  2. 火星の人
    近未来。有人探査中の事故で火星の塵と消えたと思われた植物学者にして宇宙飛行士のマーク、 探査隊はすでに彼を置いて火星を飛び立ってしまったが、ところがなんと彼はまだ生きていた。 4年後に予定された次回火星探査船の到着まで生き延びろ!というサバイバル物語。 とにかく魅力は主人公の格好よさで、どんな逆境でも不屈のアメリカンジョークを連発し続ける様がいかすし、 さまざまな障害を技術的な工夫で乗り越えていくタフさも普通に格好いい。 特に"植物学者"という設定からくる技術が素敵で、 通信や移動手段の確立といったエンジニアリングよりも何よりもまず、 持てる栄養価を計算して猛然と4年生き延びるためのイモの栽培計画を練り始める出だしからして痺れました。
  3. かぐや姫の結婚
    昨年末に観たジブリのかぐや姫の映画が良すぎたので、衝動でAmazonの"かぐや姫"の検索結果を連打した中の一冊でした。 なお、竹取物語は一切関係ないです。藤原実資という平安貴族が書き綴った『小右記』という日記が残っているそうなのですが、その中から、"かぐや姫"とあだ名されるほど溺愛した彼の娘である千古姫に言及した子煩悩大爆発パートだけを抜き出して若干突っ走り気味の解説などをした一冊。にやにやしながら読んでしまう。
  4. ファイナルガール
    短編集。 いずれも、普通に普通の日常系の物語が続いてもよさそうな流れと、そしてそのままの語り口のままで、 少しの異様な展開が忍び込んで幕を閉じる物語達。 その真に恐ろしいところは、この構成はこの一冊に閉じないというところだと思う。 あまり色のない文体でこういうことをやられると、この一冊の次に開いた本達に、 そんなことは全然ないのに、読み手の脳が勝手に異界を忍び込ませてしまい、 空気を変えてしまう。この本を読んだ後一週間くらいは完全に浸食されてしいました。
  5. 紫苑の書
    色々な面で、知っている人には有名な書籍らしいのですが。 著者さんが自ら創り上げた人工言語「アルカ」が使われている異世界へ飛び込んでしまう話。 単にそういう設定というだけでなく、その世界の登場人物の言葉は全てアルカで実際に書かれているため、 読者である自分は、まず、読めない。超絶言語オタクである主人公が読み解いていく過程に付き合っていくのだけど、 その本当に未知の言語の混ざり合った世界は他にない読書感。
  6. コンピュータ囲碁 ―モンテカルロ法の理論と実践―
    コンピュータ囲碁プログラムの作り方の解説書です。 ガベコレ本でも思いましたが、 理論パートと実際の泥臭いところまで含めた実装パートに分かれた構成、よいですね。 知りたいところを余さずとらえてくれる感じ。 理論パートの紹介も、既存の手法を辞典のように並べていくのではなく、 「ここまで知っておくとそこから読者なりの特色を盛り込んで発展させていく土台として面白いよ」 という間合いが感じられて良いです。
  7. キャットフード
    去年読んだ中で一番面白かったミステリ。 人間キャットフード化計画に走る化け猫と、仲の良い人間を守るため 「化け猫は人間は殺してもよいが、法的に、猫を殺してはいけない」 という制約を楯にロジカルに奮闘する化け猫の化けバトル…という超常論理ミステリとしての側面も面白いし、 それ以上に、中盤から参戦するあまりにも個性的な名探偵「三途川理」の悪魔的悪知恵ラッシュが強烈に新鮮でした。
  8. お皿監視人 あるいはお天気を本当にきめているのはだれか
    自宅の近所にある図書館の児童書コーナーのチョイスが結構好きなので、 毎回行く度に一冊ずつ借りています。そんな中の一冊。 「食べ物を残すと雨が振る」ということわざがドイツにあるとかで、 そんなことわざが本当になっちゃった世界。 …という設定なら、 多少なりとも「だから食べ物を残しちゃいけません」的な道徳的な側面が忍び込むくらいしそうなものだけど、 この本、全くそんな気配がない。 この秘密が明らかになった瞬間に、 徹頭徹尾その威力を利用した世界ハックを仕掛け続けて微塵も省みるところのない主役の子供たち。 めちゃめちゃ格好いい。
  9. 確率パズルの迷宮
    「数学セミナー」誌に連載されていた名コーナーの書籍化。 確率のからんだ問題を、 ほとんど計算が必要ないような鮮やかな解法で一撃必殺で解く…という意味ではパズルだけれど、 ただ不思議な問題を不思議な技で解いたということに留まらず、 なぜにそのような考え方ができるのか、を系統立てて練習問題すら添えながら説明してくれます。 だというのに、完全に解説しきったあとでも尚も一問一問の不思議さが失われない。 読み進める毎に最後まで切れ味抜群の解き技がでてきて本当に楽しいです。
  10. 式子内親王私抄: 清冽・ほのかな美の世界
    式子内親王の歌のどこが素晴らしいのか、と、彼女の歌に陶酔した著者が蕩々と並べる歌書。 その語りもよいのだけれど、自分の場合はまず、百人一首くらいしか満足に和歌を知らず、 そもそも、紹介される歌これもいいあれもいい、と初めて聞く詩に見入っていました。 「はじめなき夢を夢ともしらずして このをはりにやさめはてぬべき」 この歌の言葉本当に素晴らしく美しいと思いませんか。
  11. 魔女の子供はやってこない
    割とひどい感じのグロナンセンスとしか言いようがありません。 投げやりを装った文体に乗せられて、 ぼーっと読んでいるとだんだん普通に良い話かもと思えてきてしまったりもするのですが、 そうなるたびに無理矢理そうだこれはグロナンセンスだったと引き戻す呼吸が絶妙にひどい。
  12. いい感じの石ころを拾いに
    タイトル通り、いい感じの石ころを拾いに海岸を徘徊する紀行エッセイ。 「石ころ」と言っても一つ一つ見てみると千差万別、 というのが伝わる良い写真と、 ゆるい旅の記録と、皆様自分の好きなように好きな部分を石に見いだしてやっているのだなーというインタビュー群。

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