やりました。
Twitterの過去ログ等によると、 どうも自分は2013年の正月にいわゆる「観る将」から「指す将」に変わったようなので、 だいたい棋歴12年ちょいというところです。 残る人生で五段になる日が来るのか定かではないので、この辺で半端者ほど語りたがるの法則に従って、 こんな風にやったらここまで来ましたというような語りをしたいと思います。 まあ概ね、この本がオススメですみたいなまとめです。
割と多くの人に共感されると思うんですけど、棋書に書いてある、こうして来たらこうなる、こうだとこうする、 という様々な変化、本で読んでは見るんですけど、困ったことに全く覚えられないんですよね。 自分は主に角道開けないいわゆるノーマル四間飛車・三間飛車を主に指すんですけど、 「急戦で来られたら、なんかこれ以上どうしようもないぞと思うぎりぎりまで待って6五歩。 相手が持久戦指向で角道閉じてきたらすかさず6五歩。」という雑すぎる理解に収束して後の手順は全て忘れてしまった。
それでは何を基準に手を選ぶかというと、内省してみるに、 「どこかで見たかっこいい手を意味もわからずに真似して指す」 が基本戦術となります。この前藤井七冠が4六に据えていた角が光っていたのでとりあえずそこに打ってみる! 打った後何をすればいいのかはわからないが! 穴熊を端攻めするのに2五桂を起点に1四歩同歩1三歩と攻めるのかと思ったら いきなり1三桂成と飛び込んでるのを前に見た!やってみよう!
もちろんそのような手を成立させる文脈というか前提条件をよくわからずにやっているので、 完全に意味のない手になっていたり空振りしたりもよくするんですが、上手くいくときは上手くいきますし、 少なくとも局所的には意味のある手になっているはずなので、そういうノリの手を散りばめていくと、 連鎖的にどこかしらはいい感じに発火することもまああります。特に自分と同じような実力の相手だと、 完全に的確に対処されてしまうということもなかなかなかったり。
さて、そうすると、いかにそういう「かっこいい手」の記憶ストックを増やすかが重要になってくるわけですが、 これはまあ、そういう手を見る機会をたくさん増やすに限ると思います。
本というと、将棋の序盤は膨大すぎて、これ一冊読めば全てのかっこいい手を目にすることができる! というようなのは難しいと思うのですが、 終盤に関しては名著が存在していまして、
『 寄せの手筋200』
この本はとにかくおすすめです。 自分が寄せで繰り出せる手数はほぼこれ一冊で構成されているといって過言ではないと思います。
先の段落読み返しみて、我ながらこんないい加減なことで、 真面目にやっている人に怒られないだろうか不安になってきました…。言い訳をしましょう。 上で「どこかで見たかっこいい手を意味もわからずに真似して指す」と書きましたが、 そうはいっても実際のところ、これを繰り返しているうちに、段々と、 自分なりには少しは意味がわかってくるようになることもあります。 つまり、なぜその手がいい手なのかの理由が納得できてくるというか。 逆にその理由付けがあれば、どういう局面でならばある手が有効なのかというのも、 見様見真似だけではなく、少しは考えられるようになってきます。
思うに、こういう、形の見様見真似から入ったものに、理由、意味づけを与えるには幾つかの方法があると思います。
1.「名前を与える。」 良い指し方、というだけだと漠然としていますが、将棋でも色々な手筋に名前がついているように、 その名前で呼ぶことができるようになると、ここでは○○ができるな、○○をした方がよい、 と意識して考えることができるようになりますし、 だいたい名前というものはある程度一般化抽象化されているものなので、 元々見た場面以上に使える場面を一般化する役にも立つように思います。
こういう方向性で、自分の棋力向上に大きく影響したなあ、と思う一冊は
ですね。これは菅井竜也八段がひたすら受けの極意は「打打打」「打打打」です、 と連呼してとにかく駒を打って受けさせようとしてくる本なんですが、 おかげで実戦中でも迷った時に脳内に菅井先生が現れて「打打打」と力強く断言してくる効果は大きく、 受け間違えをかなり減らせているような気がします。
2.「実際にその手が大成功するパターンを目にする。」 当然のことなんですが、いい手がいい手である理由は、それが実際に勝ちに近づく場面を作りやすいからなので、 実際にどのように勝ちに繋がるかを見たり経験したりすると、その理由がわかりやすい。
問題はどうやってそういう場面を、自分の記憶に焼き付くようなインパクトをもって目にするかなんですが… 自分の場合は、アマチュアの、(失礼ながら)あんまり強くない人の将棋動画を見まくる経験がよかった気がしました。 プロの棋譜だと、理想的な展開の狙いは常に水面下の含みにはありつつも、 実際には相手の手の狙いはひたすら消し合う勝負になるので、大技が完全に決まることってないですよね。 解説で触れられることはあっても、「まあ実際にはこうはならないんですけどね」という空気はなかなか、 脳裏には焼き付きにくい。 指す将になる前の観る将時代ってひたすら peercastで将棋配信してた皆さん の配信を帰宅してから寝るまで観てたんですけど、対してこちらでは、 あまりにも綺麗に王手飛車を食らって絶叫するシーンなどが続出するわけです。 今でもYouTubeやニコニコで色んな方々が将棋配信してると思うんですけど、 棋力向上とは深く考えずに、楽しそうに将棋指してる面白い人を楽しく眺めているだけで、 実は得られるものがあるようにも思います。
3.「理論立てる。」 ただこう来たらこうするの樹形図を確立するだけでなく、 なぜその分岐を選ばなければならないのかを言葉で説明する……それができれば苦労はしないという話なんですが、 そういう説明に出会うことができると、やはり理解は深まります。こういう方向では、自分にとって一番身になった本は
『 藤井猛の攻めの基本戦略』
でした。藤井猛九段の、手の意味を一手一手説明をつけていかねばならないという使命感にも似た何かは物凄い。 攻めの基本を、なぜそうすると良いのかから語り起こし、どうにか読者にそれを納得させようとたたみかけてくる一冊。 ところでこの本も上の本も、級位者向けとしてカテゴライズされているんですが、 ウォーズ三段から四段に上がるための役には本当に立ちました。自分の場合、 背伸びしすぎず基本を埋めていくというのが必要だったのだと思われる。
を読んで以来、ほぼひたすら三間飛車藤井システムで戦っています。 上で書いたような、自分の琴線に触れる「かっこいい手」が何手もこの一冊に含まれていて、 相手が何で来ても自分のやりたい手が何かしらは指せそう!感が魅力です。 とはいえ、他の色んな戦型にもホーム感を持てると楽しいだろうなあとは思うので、 何か相性のいい戦法を見つけたいところです。五段目指してがんばります。