PDSとの違い

PDSとは Public Domain Software (公有ソフトウェア?)の略であって、 特定のライセンスを指すわけではありません。 作者によって著作権が放棄され、誰でも自由に勝手に使っていいですよ、 という状態におかれたソフトウェアのことを言います。

NYSLは、要するに「このソフトウェアはPDSです」と宣言しているにすぎません。 従って、このページの見出しとは反して、内容的には PDS と NYSL ソフトウェアに違いはありません。

気分の違い

しかし、「PDSです」と5文字で済ませればよいところを、 わざわざライセンスを規定しているのには少しだけ意味があります。 NYSLの1行目に書かれている「Everyone'sWare」が鍵です。

"Public Domain" という言葉からは、公共のもの、というイメージを受けます。 そこから発展すると、Public Domainなソフトウェアを改変したものは、 (何せPublicなものであるのだから、)自分で私有せずに PDS として還元しなくてはならない、という考え方につながります。

その考え方が正しいのか間違っているのかはここでは議論しません。 しかし、いずれにせよ、私の公開するPDSに対しては、 このイメージを持たれたくはありませんでした。改変版をビールウェアにしようが、 closedにして商品として売ろうが、改変した人の好きなように 自由にやって欲しかったのです。「公共の共有物」というよりは、 「ソフトウェアを手にした個々のユーザーさん自身のもの」という感覚で。

そこで、「Taro's Software」であると同時に「Hanako's Software」であってしかも 「John's Software」で更に………を全て足し合わせた名称として選んでみたのが PDS ならぬ「Everyone'sWare」なのです。

英語として見ると明らかに変ですけど、気にしないこと。 和製英語というかむしろオレ語、なので。

しかし

冷静に考えてみると Public Domain も Everyone's も、 受ける印象大して変わらないですね。

何かもっといい表現、募集してます。

さらに深く (2008/03/19)

【GPL】ライセンス問題討論すれ7【BSDL】 で、参考になる議論がありました。

まずこれは引用しておかないと。

28 :login:Penguin:2006/08/01(火) 08:42:26 ID:VzdIH0hT
  NYSLはNYSLで便利だと思うが、Public Domainですって
  書くのも日本で有効らしいよ。
29 :login:Penguin:2006/08/01(火) 08:44:04 ID:VzdIH0hT
  つまり、Public Domainですって書くことによって、
  Public Domainには出来ないけれども、Public Domain
  と同等の状態にしようとしているとみなされるってことらしい。


32 :login:Penguin:2006/08/01(火) 13:06:52 ID:LRhZ/V8Y
  ~(略)~
  NYSL みたいな Public Domain モドキって混乱をきたす可能性があると思うんだよね。
  特に、まるで Public Domain の宣言だけじゃ著作権者の意思として
  事実上の Public Domain 下におくのに不十分であるかのような認識が出てくること、これが問題だと思う。
  ~(略)~

実にその通りで、「Public Domainです」と書きさえすればおそらく法的には十分で、 あと免責事項を加えれば、NYSLと同等以上の意味を持たせることができるだろうと思います。 Creative Commons を使って (米国法に従う)Public Domain と宣言するなどすれば完璧でしょう。 「まるで Public Domain の宣言だけじゃ著作権者の意思として 事実上の Public Domain 下におくのに不十分であるかのような認識が出てくる」としたら それは問題で、このページがそのような認識を与えてしまうとしたら、それは私の意図ではありません。 繰り返しますが、法的技術的には、NYSL は、単に、PDS です。そうなるようにしたつもりです。 違いは単にそこに私が込めている気分の違いでしかありません。

その上で。

54 :login:Penguin:2006/08/02(水) 00:16:58 ID:T6RVx3eG
  NYSLとPDSの違いはhttp://www.kmonos.net/nysl/ に書いてあるじゃん。

  要するにPDSだと「元のソースに還元しろ」とか言われて、気楽に流用できんことがあるから、
  「外野は黙っとけ」と言う意図を明確にしたものがNYSL。

が、私の「気分」に一番近い。

私が NYSL で配布している Noah というソフトがあります。ある時、Noah の実行ファイル名と アイコンだけを変えた tonboarc というソフトが公開されたことがありました。 私が NYSL でやりたかったことは、この時の例えば「これ…いいのか? マジパクリじゃねえ? 」という反応に対して、 圧縮解凍スレの575 :: Noahはそういう用途は全然OKって明示してある Noahスレの192 :: NYSLなんてライセンスわざわざ作ったぐらいだから別に構わんと思うけど、 のような反応を、誰もが、絶対の自信を持って返せるように明示しておくことでした。

あるいは、Archon2 という Noah ベースに大幅に改善を加えたソフトに対し「パクり」などという 馬鹿げた言いがかりが付いた時に、 Archonスレの150 :: それはNYSLひいてはk.inaba氏に対する侮辱に見える と、客観的に全ての人が返せるように。

本来 Public Domain と宣言したら、ここにあるような文章を明示的に書かなくても、 当然なにをどうしても「いい」んです。 でも仮に、Noah に Public Domain としか書いていなかった場合、上に挙げたような意見が すかさず出て、すぐに周りにも認められるということがあるでしょうか? 私はそうあるべきと思っていますが、全ての人がそう考えるという確信はありませんし、 実際、経験上、そうはなりません。 かつて OSSFJ なんてもので皮肉られなければならないほど「オープンソースTM に対する フリーライド」を否定的に見る人の数が多かった、というのと同じ構図です。

それだけならば、わざわざ「ライセンス」として大袈裟にするのではなく、 「Public Domain」と名乗っておいて、その意図するところは別の手段で 伝える、という形態を取るべきではないか?とお考えの方もいらっしゃると思います。

58 :login:Penguin:2006/08/02(水) 07:44:53 ID:Hun/tAtY
  ~(略)~
  元々 Public Domain は「元のソースに還元しろ」なんて意味合いを持つものじゃないでしょ。
  それなのに「元のソースに還元しろ」なんて話を聞くのであれば、
  Public Domain はそうじゃないってことを啓蒙していく必要があるってことじゃん。
  それを、Public Domain モドキを作ってそれに明示することで解決しようとしたって
  そのうち Public Domain モドキも「元のソースに還元しろ」なんて言われる可能性もあるし、
  そのときはよりマイナーな分啓蒙も難しくなって、本末転倒なんじゃないの。

前半はその通り…理想的にはそういう活動をすべきです。 ただ、それをやり遂げられる自信も、それをやる動機も私にはありませんでした。 やりたいのは、「Public Domain」という用語に関して自分の認識を広めることではなく、 今自分が公開しているソフトウェアの利用条件について私の思うところを正確に伝える ことでしかかったのです。そしてそれには、ライセンスとして定義してこのページを作るのが 最速だと考えました。Public Domain モドキことNYSLに対して「元のソースに還元しろ」 なんて言われたらどうすればいいか?このページを見せればいいんです。全然難しくありません。

ただ。

3年前、5年前と違って、こんな言葉を費やす必要はなくなってるかもね、という認識はあります。

ソースを公開して使い使われするのはずっとずっと一般的になってきて、 それは「パクり」とは全然違うという意識を、少なくとも、そんなソフトを使う人になら、 誰にも共有されるようになってきているとは思う。 だから、2008年の今、NYSL を採用する意味は、もはやあまり無いかもしれない。 私はまだそこまで思い切れないでいますが、 たぶん、もうみんな、「PDSで。」でいいのかもしれない。

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